肺炎球菌ワクチンの重要性 種類・効果・選び方について
肺炎は日本人の死亡原因の上位に位置する病気であり、特に高齢者では重症化しやすいことが知られています。その原因のひとつが「肺炎球菌」という細菌です。
肺炎を代表とする肺炎球菌による感染症は、時に命に関わることもあるため、予防がとても重要です。その予防手段として広く利用されているのが「肺炎球菌ワクチン」です。近年はワクチンの種類が増え、より多くの血清型に対応できるようになりました。
また、2025年9月には日本呼吸器学会など関係学会から合同で「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方」が提言されており、それに則したワクチン接種が推奨されています。
ここでは、肺炎球菌とは何か、ワクチンの種類や効果、そしてどのワクチンが推奨されるのかについて、わかりやすく説明します。
肺炎球菌とは
肺炎球菌は、主に呼吸器系に感染する細菌の一種です。肺炎球菌は、私たちの鼻やのどに普段から存在することもありますが、体力・免疫力が落ちたときに、深刻な病気を引き起こすことがあります。その中でも特に注意すべきは肺炎です。肺炎は、肺の炎症を引き起こし、高熱、咳、息切れ、胸痛などの症状を伴います。重症化すると、呼吸困難や意識障害を引き起こすこともあり、特に高齢者や乳幼児、免疫力が低下している人々にとって命に関わる可能性があります。その他、髄膜炎、菌血症などの重篤な疾患に進展することがあります。
肺炎球菌には血清型と呼ばれる多くの種類があり、現在知られているだけでも90種類以上あります。肺炎球菌ワクチンはこの血清型の一部をカバーすることで、感染や重症化を防ぎます。
肺炎球菌ワクチンの種類と効果
肺炎球菌ワクチンには大きく分けて2種類があります。
PPSV23(23価莢膜多糖体ワクチン:ニューモバックス)
PPSV23は長年使用されてきたワクチンで、幅広い血清型をカバーすることが特徴です。研究によれば、PPSV23の接種により成人における肺炎球菌性肺炎の発症リスクが50-80%減少することが示されています。また、重症化予防にも効果があるとされ、65歳を対象とする定期接種として2026年1月現在も10年以上使用されています。
一方で、免疫の持続が比較的短いとされており、時間とともに効果が弱まることがあります。
PCV(結合型ワクチン)
結合型ワクチンは、免疫をより強く、長く維持しやすい特徴があります。代表的なものに以下のものがあります。
- PCV13 (プレベナー13) :13種類の血清型
- PCV15 (バクニュバンス) :PCV13に2種類追加
- PCV20 (プレベナー20) :PCV13に7種類追加
- PCV21 (キャップバックス) :最も広い21種類をカバー
特にPCV20・PCV21はカバー範囲が広く、近年成人における肺炎球菌感染症の原因となっている血清型にも対応しているため、任意接種として選ばれることが増えています。
また、以前の研究では、PCV15接種後にPPSV23を接種する連続接種がブースター効果により共通の血清型で高い免疫効果を示すことが知られています。
推奨される肺炎球菌ワクチン(2026年1月時点)
65歳以上の成人に対して推奨されている肺炎球菌ワクチンを以下にまとめます。
- PPSV23(ニューモバックス)をまだ接種していない方
- 65歳の人、または60〜64歳で重い基礎疾患がある人は定期接種としてPPSV23を受けることが検討されます。
- それ以外の方や上記に該当してもPCVを希望される方は、PCV20(プレベナー20)やPCV21(キャップバックス)の任意接種が考えられます。
- また、定期接種のPPSV23を見越して、その1年前にPCV15(バクニュバンス)を接種し、PCV15→PPSV23の連続接種をするという方法もあります。
- PPSV23をすでに接種した方
- 以前はPPSV23の再接種が選択肢となりましたが、現在はPCVの選択肢が増えたため、PPSV23の再接種は原則推奨されていません。
そのため、PPSV23接種から1年以上あけて、PCV20やPCV21の任意接種が望ましいとされています。
- 以前はPPSV23の再接種が選択肢となりましたが、現在はPCVの選択肢が増えたため、PPSV23の再接種は原則推奨されていません。
- PCVをすでに接種した方
- PCVを接種後に再度PCV20やPCV21を接種するのに適切な時期は明らかになっていませんが、安全性の観点からは1年以上あければPCV20やPCV21を接種することは可能とされています。
ちなみに定期接種については、今後PPSV23からPCV20への変更も検討されるという話もあり、引き続き最新の情報が待たれます。
これらを踏まえて当院では、任意接種される方はPCV20もしくはPCV21が望ましいと考え、特に広い血清型をカバーするPCV21(キャップバックス)を推奨しています。
定期接種に該当する方は、PPSV23(ニューモバックス)を第一選択としつつ、値段や効果や持続期間も踏まえて適切な接種をご相談したいと考えます。
*当院における各ワクチンの料金はこちら
肺炎球菌ワクチンに関するよくある質問
Q1.どのワクチンを選べばよいか迷っています。どう判断すればよいですか?
選択は年齢・接種歴・基礎疾患の有無によって変わります。
任意接種では広い血清型をカバーするプレベナー20やキャップバックスが選ばれることが増えています。一方、65歳の定期接種ではニューモバックスが公費で受けられるため、費用面も含めて選択肢が広がります。
当院では接種歴を確認しながら、最適なワクチンを一緒に決めていきます。
Q2. 以前ニューモバックスを接種しましたが、もう一度受ける必要はありますか?
現在は、ニューモバックスの再接種は原則推奨されていません。
代わりに、前回のニューモバックス接種から1年以上あけてプレベナー20やキャップバックスを接種することが望ましいとされています。より広い血清型をカバーでき、免疫の質も向上すると考えられています。
Q3. 副反応はどのくらいありますか?
いずれも比較的安全性の高いワクチンとされています。
よくみられるのは接種部位の腫れ・痛み・赤みで、数日以内に自然に治まります。まれに発熱や倦怠感が出ることもありますが、通常は軽度です。強いアレルギー反応は非常にまれですが、接種後に気になる症状があれば医療機関へご相談ください。
Q4. ワクチンを受けても肺炎にかかることはありますか?
完全に防ぐことはできませんが、重症化を大きく防ぐ効果が期待できます。
肺炎球菌には90種類以上の血清型があり、ワクチンがカバーしていない型による感染は起こり得ます。それでも、ワクチン接種により重症化や入院のリスクを大幅に下げられるため、特に高齢者や基礎疾患のある方には接種が強く推奨されています。
まとめ
肺炎球菌は、高齢者や基礎疾患のある方にとって重症化の原因となりやすい細菌です。肺炎球菌ワクチンは、肺炎や重い合併症を防ぐための重要な手段であり、近年はワクチンの種類が増えたことで、個々の状況に合わせた選択が可能になりました。どのワクチンが適しているかは、年齢・接種歴・健康状態によって異なります。気になることがあれば、ぜひハートフルクリニックへご相談ください。
(院長 芦田宗宏)
