肥満症
肥満症は、単に体重が重い状態ではなく、体内に脂肪が過剰に蓄積することで、健康障害を合併するか、その合併が予測され、医学的に減量を必要とする疾患を指します。見た目の問題だけでなく、高血圧、糖尿病、脂質異常症、脳梗塞、睡眠時無呼吸症候群、関節の痛みなど、さまざまな合併症を伴う状態です。
ここでは、肥満症の原因、合併症、治療法についてわかりやすくご説明します。
肥満症の原因について
肥満症の根本的な原因はエネルギーバランスの乱れです。
通常、エネルギー代謝や貯蔵状態に合わせて、消化管や脂肪組織などから食欲制御物質が分泌され、それに中枢神経が応答して食欲が調整されています。
しかし、様々な要因が絡み合って調整機構が破綻し、慢性的にエネルギーバランスの乱れが起こることがあります。その結果、肥満および肥満症が生じると考えられます。
様々な要因として以下のようなものが挙げられます。
- 遺伝的要因
- 生理学的要因
- 環境因子(食環境、大気汚染)
- 行動
- 社会文化/規範
- 心理的要因
肥満症の合併症について
肥満症の脂肪組織では脂肪細胞の肥大化により、代謝・免疫・食欲など多様な生体機能に関与するアディポカインの分泌異常が生じ、インスリン抵抗性が誘発されます。
さらに、エネルギー過剰状態で増加する遊離脂肪酸が肝臓・骨格筋・膵臓・心臓などの臓器に異所性脂肪を蓄積させます。この異所性脂肪が、代謝組織の機能不全を引き起こします。
そうした結果、糖尿病などの代表的な疾患にとどまらず、循環器系・呼吸器系・消化器系など様々な臓器に合併症を伴うのです。
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症
- 冠動脈疾患
- 脳梗塞/一過性脳虚血発作
- 代謝異常関連脂肪性肝疾患
- 月経異常/不妊
- 睡眠時無呼吸症候群
- 運動器疾患
- 腎臓病
肥満症の治療法について
肥満症の治療目的は、「肥満を原因とする、もしくは肥満に関連する健康障害の予防・改善」です。そのためには内臓脂肪の減少が有効です。
減量の達成のためには、食事や運動などの生活習慣を見直し、改善を目指します。また、そのための行動変容を促す行動療法も大切です。それでも減量が不十分な場合には薬物療法や手術療法が検討されます。
1. 食事療法
食事の内容や量を見直すことで、摂取エネルギーを適切にコントロールします。極端な食事制限ではなく、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。
- 野菜を多く取り入れる
- 揚げ物や脂っこい料理を控える
- 間食や甘い飲み物を減らす
- よく噛んで食べることで満腹感を得る
医師の指導のもと、無理なく続けられる食事改善を目指します。
2. 運動療法
運動は、脂肪を燃焼させるだけでなく、筋肉量を増やして基礎代謝(何もしなくても消費されるエネルギー)を高める効果があります。
- ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動
- 筋力トレーニングで筋肉を維持・増強
- 日常生活の中で階段を使う、こまめに動くなどの工夫
運動が苦手な方でも、無理のない範囲で継続することが重要です。
3. 行動療法
行動療法では、食事や運動の記録をつけたり、目標を設定したりすることで、生活習慣を見直し、改善につなげます。
4. 薬物療法
生活習慣の改善だけでは効果が不十分な場合、肥満症治療薬が補助的に用いられます。近年、GLP-1受容体作動薬という注射薬が保険承認され、食欲を抑え、体重減少を促す効果が期待できます。
5. 手術療法
手術療法は、重度の肥満症で、他の治療法では効果が得られない場合に検討されます。胃バイパス術やスリーブ状胃切除術など、いくつかの種類の手術があり、患者さんの状態に合わせて選択されます。
また、これらの治療により一旦減量に成功して健康障害が改善しても、リバウンドが起こりやすいことが言われています。しかし、これはご本人の自己管理だけの問題ではありません。人の身体には恒常性という「元の体重に戻ろう」とする生理的反応が働くことや、減量すると基礎代謝が低下してエネルギー消費が減ってしまうといったことがわかっており、自然な身体の反応としてリバウンドは起こってしまうのです。そのため、減量後もその状態を維持するための長期的な治療計画が重要となるのです。
まとめ
肥満症は、放置すると様々な合併症を引き起こす可能性があります。
ハートフルクリニックでは、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、肥満症の合併症に対する治療とともに、肥満の改善のための食事療法、運動療法、行動療法などをご提案いたします。「体重が増えてきた」「健康診断で肥満を指摘された」など、少しでも気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
